現在、日本では、夫婦の3組に1組は離婚している時代なので、シングルマザーというのは、ごく当たり前の存在なのですが、経済的に厳しい状態に置かれている人が多く、そのため、シングルマザーをサポートすることを目的とした公的制度が増えています。
厚生労働省が発表した「全国母子世帯等調査結果報告」によれば、シングルマザーの平均年収は、243万円となっており、生活するうえで、かなりギリギリの金額となります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000188138.html
でも、世間一般的に認知されておらず、活用が不十分という制度が多いのが現実です。ここで、支援制度に関する知識がある人とない人とでは、かなり状況が違ってきます。
そこで、このページでは、シングルマザーが利用できる公的支援制度について、詳しくみていきますが、生活していくうえで、考えるべきことは以下の2点です。
- 手当と助成金を活用して、収入を増やす
- 減免と割引制度を活用して、支出を抑える
シンルグマザーが利用できる手当というのは、実はかなり多いのですが、自治体によって内容が異なるなど、ややこしい部分もあるので、正確に把握している人は少ないです。
下記に、シングルマザーが利用できる代表的な制度をまとめていますので、ぜひ、参考にしてください。
目次
1:シングルマザーが利用できる手当、助成金
児童扶養手当
0歳~15歳の国内に住所がある子どもに対して、支給される児童手当をもらっていないという人はいないと思いますが、似たような手当で、『児童扶養手当』という制度があることは、ご存知でしょうか。
児童扶養手当は、母子・父子家庭を対象とした手当で、0歳~18歳までの子どもを対象に支給されるものです。
支給される金額
児童扶養手当は、「全額支給」、「一部支給」、「不支給」の3区分に分かれており、扶養人数や世帯主の所得によって、支給額、支給要件が異なります。
全額支給の場合、子ども1人あたり、月額42000円が支給されます。子どもが2人だと、47000円、3人目以降は、1人増えるごとに月額3000円が加算されます。
<児童扶養手当の支給額例>
子どもの人数 | 支給額(月額) |
---|---|
1人 | 42000円 |
2人 | 47000円 |
3人 | 50000円 |
4人 | 53000円 |
5人 | 56000円 |
一部支給の場合には、以下のような計算式が用いられます。
41990円−(申請者の所得—全額支給所得制度限度額)×0.0185434
かなりややこしい計算となるのですが、さらにややこしいのですが、受給できる資格があるのかどうかの判断基準です。
まず、所得制限があり、平成30年7月までは、下記の通りとなっています。
<平成30年7月まで所得制限限度額表>
扶養人数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
0人 | 19万円 | 192万円 |
1人 | 57万円 | 230万円 |
2人 | 95万円 | 268万円 |
(※3人目以降1人増すごとに38万円加算)
これが、8月以降は、下記の通りになります。
<30年8月からの所得制限限度額表>
扶養人数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
0人 | 49万円 | 192万円 |
1人 | 87万円 | 230万円 |
2人 | 125万円 | 268万円 |
『全部支給』の所得制限限度額が+30万円引き上げられるということになります。
ここに、養育費をもらっている場合には、その分の80%が所得として合算されることになりますが、養育費の定義も、ややこしいので、この点については、自治体の窓口で確認してください。
支給されることになったら、毎年8月、12月、4月の年3回に分けて、4ヶ月分が指定口座に振り込まれます。(自治体によって、振り込み日は違いますが、11日前後になることが多いです。)
注意点としては、申請を出して、支給が認められた後は、毎年8月に児童扶養手当現況届を提出する必要があり、この届出がないと、支給がストップしてしまうということです。
自動継続ではなく、1年ごとの更新が必要ということですね。シングルマザーにとっては、毎月、数万円もらえるというのは、かなり大きいので、忘れないようにしてください。
住宅手当
20歳未満の子どもがいる母子(父子)家庭で、月額10000円を超える家賃を払っている人を対象とした制度です。
受給には、所得制限がありますが、市町村単位で行われている制度なので、あなたの居住地の市町村で、対象となるかどうか調べる必要があります。
なお、支給対象者の定義は、市町村によって異なりますが、おおよそ、下記のような条件が設定されています。
- 申請先の住所地に住民票があること
- その住所地に6ヶ月位以上住んでいること
- 児童扶養手当の所得制限額に満たないこと
- 生活保護を受けていないこと
- 家賃が月額1~6万円であること
支給額も、自治体によって異なりますが、おおむね月額5000円~10000円となります。
医療費助成制度
母子(父子)家庭を対象に、世帯の保護者や子供が医療機関で診察を受けた際、健康保険の自己負担分を市町村が助成する制度です。
対象年齢は0歳~18歳となり、所得制限があるので、一定額を超えると制度を利用できませんが、こちらも、市町村によって、制度の内容が異なるので、ご自身で確認してみてください。
こども医療費助成制度
医療費助成制度には、所得制限がありますが、こちらの『こども医療費助成制度』には、制限がありません。シングルマザーであれば、無条件で受給対象となります。
ただし、こちらの制度は、あくまでも、子どもの医療費に対する助成制度であり、親は対象外です。
支給対象となる子どもには、年齢制限がありますが、、未就学前、小学4年生まで、中学生までというように、自治体ごとに異なります。
児童育成手当て
こちらも、自治体単位での受給になるので、居住地の市役所に申請することになりますが、18歳までの児童を扶養する母子家庭を対象に、月額13500円が支給されます。毎年6月・10月・2月に、その前月までの支給額が、本人指定の口座に振り込まれます。
所得制限がありますが、自治体ごとに制限額が違うので、市役所の窓口で確認してください。
2:シングルマザーが利用できる貯金の優遇制度
貯金の利子に関して、優遇を受けられる制度が2つあります。金額的には、小さいかもしれませんが、対象となるようでしたら、申請しておいたほうがいいです。
福祉定期預金
児童扶養手当などの公的年金受給者を対象とした定期預金制度です。
通常の定期預金に年間0.1%の金利を上乗せしてくれる制度であり、たとえば、ゆうちょ銀行の場合、利息は通常0.01%ですが、それが0.11%になります。
ゆうちょ銀行以外にも、ハナ信用組合(0.6%)、豊和銀行(0.325%)、中栄信用金庫(0.31%)など、高金利の福祉定期預金を設定している金融機関があるので、貯金をするのであれば、こういった銀行を利用することを、オススメします。
預金利子非課税制度
児童扶養手当、遺族年金を受給している場合、350万円まで預金に対する利子が、非課税になる制度です。
3:生活費に関する免除制度
生活費に関しても、シングルマザーが利用できる支援制度があるので、代表的なものリストアップしてみます。
上下水道料金減免制度
児童扶養手当を受給しているシングル世帯を対象に、水道料金を減額する制度があります。各自治体によって、減免制度が用意されているところ、ないところに分かれますが、なかには全額免除としている自治体もあります。
申請の方法、時期が自治体によって違うので、市役所で確認してください。
粗大ゴミ処理手数料減制度
粗大ゴミを捨てる時には、指定の料金を支払わなければいけませんが、児童扶養手当を受給している世帯を対象に、手数料を減免する制度があります。
また、ゴミ袋を指定している自治体のなかには、無料で配布しているところがあるので、確認してみてください。
JR通勤定期券割引制度
児童扶養手当を受給している世帯全員を対象に、JRの定期券を3割引で購入できる制度です。有効期限は1年間で、市役所の担当窓口に申請することになります。
ほかにも、自治体によっては、市営バス、市営地下鉄などに対する交通費の支援を、独自で行なっているケースがあります。
4.仕事に役立つ支援制度
就労しているシングルマザーの47%は、非正規雇用で働いていますが、冒頭でも触れたように、収入が少ないため、ギリギリの生活を強いられている家庭も多いです。
貧しいがゆえに、その状態から抜け出せないという人も少なくないため、就労に関する支援制度が整えられています。
自立支援給付金
雇用保険から教育訓練給付を受給できない人を対象に、教育訓練講座の費用の一部が支給される制度です。ひとり親が自立することを目的として、厚生労働省と各自治体が協力して行なっています。
就職に必要なスキルを取得することにつながると、認定された講座が対象となり、費用の20%(最大10万円)が支給されます。
対象講座は、IT系・語学系・介護系まで幅広く、ハローワークなどで、講座の内容を確認することができます。
自立支援給付金の対象条件は、下記の通りです。
- 児童扶養手当を受給している、または同等の所得である
- 雇用保険法による教育訓練給付を受給できない
- 就業経験、資格などから判断して、適職に就くために教育訓練が必要
- 過去に訓練給付金を受給していない
なお、この給付金は、講座を修了した時に支給されることになっているので、途中でやめてしまった時にはもらえないので、注意してください。
高等職業訓練促進給付金
看護師、介護士といった高度な資格の取得を目指す、ひとり親を対象とした給付金制度であり、資格取得のための勉強をしている間、一定の金額を給付するという制度です。
ひとり親が、子どもを育てながら受験勉強に取り組むとなると、仕事にあてる時間が、その分、少なくなって、収入が減ってしまうのではという発想のもとに、対象者の生活費の負担を軽減することを目的として、給付金が支給されます。
支給額は月額7~10万円で、支給期間は最大3年間となっています。かなり手厚い優遇を受けられる制度ですが、それだけに支給条件は厳しいです。
薬剤師として働いていて、一定の収入があるとなると、申請しても却下されてしまうかもしれません。でも、一時的に、仕事を減らして、別の国家資格の取得を目指すといったことであれば、申請が通る可能性があります。
いずれにしても、事前の相談が必要なので、居住地の市役所に相談してみてください。
なお、収入以外では、下記のような条件が設定されています。
- 20歳未満の児童を扶養している、ひとり親で児童扶養手当を受給している、又は同等の所得である
- 仕事、または育児と就業の両立が困難
- 過去に促進給付金や終了給付金の支給制度を利用したことがない
- 1年以上(2年以上の場合もあり)のカリキュラムを修了することで、対象資格取得の見込みがある
5.子どもの養育、教育に役立つ制度
子どもの養育、教育に関する支援制度です。保育料に関する制度もあるので、要チェックです。
就学援助支援
住んでいる地域の自治体が、小・中学生を対象に、学校生活に必要な経費を負担してくれる制度です。学校で、申請書が配布されているケースが多いです。下記の費用について、支援が受けられます。
- 学用品費
- 体育実技用具費
- 新入学児童生徒学用品費
- 通学用品費
- 通学費
- 修学旅行費
- 校外活動費
- 医療費
- 給食費
下記の条件のいずれかに当てはまる人が、対象となります。
- 申請する自治体に住所があるひとり親世帯で、児童扶養手当を受給していること
- 市民税が減免、または所得税が非課税である
- 国民年金、国民健康保健が減免、または徴収の猶予を受けている
- 生活福祉資金による貸与を受けている
- 生活保護が停止、または廃止になった
保育料免除支援
自治体が管理している認可保育園の保育料は、世帯主の住民税によって、保育料が決められているので、所得が低ければ、減額、免除となります。
逆に、シングルマザーでも、所得が高ければ、保育料は高額となります。薬剤師でフルタイムで働くとなると、収入が多くなるので、あまりオイシクはありませんが、逆に、パートで働くという時には、この制度の恩恵を受けられる可能性があります。
注意点としては、実家で、親や兄弟姉妹と一緒に住んでいる場合、全員の住民税を合算したものが、審査の対象になるので、保育料が高くなってしまうということです。
でも、実家の隣で、一人で住んでいて、金銭的な援助を親から受けているといった時には、あなた自身の住民税だけが対象となるので、保育料が減免、免除される可能性が高くなります。
また、なかなか離婚が成立せず、別居をしているという時でも、一人親世帯とみなされて、保育料の免除支援を受けられるケースがあるので、市役所で相談してみてください。
まとめ
このページで取り上げた制度は一部であり、シングルマザーを支援する制度は、ほかにも色々あります。自治体ごとに異なるので、ご自身で確認してください。
ちなみに、役所のホームページを見ても、情報を得られると思いますが、制度によって管轄が違っているなど、お役所的なややこしさもあるので、窓口で教えてもらったほうが確実です。