転職に失敗する薬剤師に共通する3つの要因

 

薬剤師というのは、ほかの職業と比較しても、転職の機会が多い職業です。一度や二度の転職を経験したという人は珍しくないですし、なかには、3回、4回と繰り返す人もいます。

 

その背景には、薬剤師というのは、業界的にも、転職が当たり前とみなされているという事情があります。(薬剤師として働いている人からすると、普通かもしれませんが、すぐに転職できるというのは、ほかの職業では、あまりないことです。)

 

でも、だからといって、誰もが転職することで、良い結果を得ているわけではありません。実は、転職したことを後悔しているという人は、少なくありません。要は、転職に失敗したということですが、こういった薬剤師は、本当に多いです。

 

では、なぜ、転職に失敗するのか?

 

理由を聞くと、人それぞれではあるのですが、それらを集約すると、おおよそ、3つの原因にたどり着きます。結局は、この3つの原因のいずれかに該当するというもので、3つの落とし穴といった感じです。

 

具体的には、「人が少ない職場への転職」、「転職理由が曖昧」、「提示されている条件しか見ない」というものです。特に、「提示されている条件しか見ない」ことによる、転職後のトラブルは後を絶ちません

 

それぞれの何が問題なのか、一つずつ理由をまとめていますので、参考にしてください。

 

目次

人が少ない職場への転職

薬剤師が働く職場というのは、多種多彩です。大学病院など、30名以上の薬剤師が在籍しているような環境もあれば、中小薬局など1〜2名で勤務する場所、ドラッグストアなど、シフトを組んでローテーションで勤務する場所など、実に様々です。

 

そのなかで、「少人数だと、人付き合いが楽」というイメージで、小さな薬局へ転職して、後悔している、薬剤師が多いです。

 

職場の人間関係というのは複雑で、人数が多いと、派閥が生まれやすく、そこで苦労するというケースが多々ありますが、だからといって、人が少ない職場であれば楽かと言えば、そうでもなく、毎日、同じ人間と顔を合わせるというのも、色々な苦労があります。

 

人間なので、相性の問題もありますし、どちらかが急なシフト変更を迫られた時には、休日返上で対応しなければならないケースもあり、こういったことが原因で、関係がギクシャクすることもあります。

 

そして、一度、関係がおかしくなると、狭い空間では逃げ道がないだけに、大変です。お互いに、辛く思いながら、働き続けることになります。

 

また、人数が少ない職場で働くことの、もう一つの失敗要因として、薬局によっては、個人に任される仕事の負担・責任が重くなるということがあります。一人薬剤師というケースも珍しくなく、そのプレッシャーに耐えらず、離職してしまう人もいます。

 

同僚や先輩に恵まれれば、お互いに助け合うなど、協力して仕事を進めていけるので、そういった環境であれば、ラッキーなのですが、そう運良く恵まれるとも限りません。

 

相性の合わない相手と毎日顔を合わせながら、「協力し合う」ことは、相当、難しいです。さらに、ギクシャクしている時に、相手との力関係で、自分が下になってしまうと、我慢を強いられることになり、これも、やはり耐えられるものではありません。

 

これが、数店舗を経営していて、店舗間の移動が盛んな会社であれば、別の店舗への異動を申請することで、人間関係をリセットすることも出来ますが、別店舗への異動を認めていない会社、あるいは、そもそも1店舗しか存在しない会社だと、そのまま働かざるを得ません。

 

こうなると、逃げ道がないと追い込まれ、再転職に踏みきる人が多く、こういった職場への転職は、失敗と言わざるを得ません。

 

転職に失敗する薬剤師に共通する3つの要因

 

転職の理由が曖昧

冒頭でも触れたように、薬剤師というのは、転職が特別な職業ではないため、「なんとなく飽きたので、特に大きな不満があるわけではないけど、転職することにした」といった、曖昧な形で、転職する人もいます。

 

また、案外、多いのが、漠然とした成長志向です。転職の理由を「知識を高めたい」としているけど、では、具体的に、どんな知識を得たいのか、どんなスキルを伸ばしたいのか、明確な目標が全くないといった状態ですが、こういった姿勢での転職は、間違いなく失敗します。

 

大学病院、がんセンター、総合病院の門前薬局など、高い知識と技術が要求されるような職場を希望して、転職したけど、スキル不足から、仕事についていけなかったという失敗談も珍しくありません。

 

周りのレベルが高すぎて、日々の業務に追いつかない。医師と会話が成り立たない。こんな状況に陥ってしまった結果、毎日、プレッシャーを感じるようになり、いたたまれなくなって退職したといった感じですね。

 

また、仕事についていくために、新しい知識を習得しなければいけないけど、激務なので、普段は仕事に追われて何もできず、休みの日を潰して勉強に明け暮れる、という人も多いです。

 

これは、勉強熱心ということで、美談のように聞こえますが、しっかり休みを取って、疲れを取るというのも、仕事の一部です。休息を取らないまま、働き続けても、いつかパンクします。

 

しかも、それを自分の積極的な意志で行うならばともかく、必要性にかられて、自分のプライベートを犠牲にするとなると、まず納得できる人はいません。

 

こんな生活が続くことで、ストレスが募り、結果的に体を壊してしまう。こういった転職は、失敗そのものですし、実際、続かなくて辞めてしまう人が多いです。

 

薬剤師として、自分の知識・技術を向上させたいということを、本気で考えてのことであれば、話は別ですが、中途半端なモチベーションだと、絶対に続きません。

 

周りは優秀な人達ばかりで、差を感じて、挫折してしまうということも起こりえます。そうなると、また転職することになりますが、こうなると、職歴に傷が付いた状態なので、厳しくなるでしょう。

 

製薬会社へのMRへの転職は慎重に

転職の失敗ということでいえば、薬局や病院だけでなく、大手製薬メーカーのMRへ転職したけど、失敗したというケースも、よく見られます。

 

薬を扱うことでは一緒ですが、実際には、別業種と言ってもいいぐらい、仕事の内容は異なります。特に、MRと言えば、営業力が全てといっていい職業ですが、薬剤師を目指すような人というのは、そもそもの人物特性として、営業という仕事には、あまり向いていなかったりします。

 

そんな人が、薬学の知識はあるからと、安易に転職すると、全く成績を残せないという結果に陥ります。こうなれば、評価も落ちますし、給与が出来高制であれば、薬剤師の時と比較して、収入が激減することになります。

 

薬剤師の資格を活かす形で、未経験のジャンルに挑戦するという考え方自体は、前向きで素晴らしいのですが、「自分の資質」を間違えると、現実とのギャップに苦しむことになるので、注意してください。

 

もちろん、薬剤師として働いている人のなかにも、営業向きという人もいるので、そういった人であれば、MRに転職するのは問題なしです。自分の適性を冷静に判断するのが重要で、ここで見誤ると失敗してしまうということですね。

 

転職に失敗する薬剤師に共通する3つの要因

 

提示されている条件しか見ない

先ほども触れましたが、薬剤師が転職に失敗するパターンで、最も多いのが、このケースです。募集要項に提示された条件だけで、転職を決めた結果、「内部事情が大きく異なって、後悔した」という、ケースは後を絶ちません。

 

報酬や給与というのは、数字で明確に記載されるので、このあたりに関しては、それほど問題ないのですが、付帯条件で、こんなはずじゃなかったという事例が多々あります。

 

たとえば、残業代が出ない、有給が使えない、勤務時間が長いといったことですね。

 

また、自分の技術向上のため、転職したけど、同じ仕事しか任せてもらえず、勉強にならない、研究職として転職したのに、自分がやりたい研究に取り組ませてもらえないなど、転職前に思い描いていた現実とは違って、後悔したという事例も多いです。

 

転職で失敗しないようにするには、どうすればいい?

では、失敗しないようにするには、どうすればいいのでしょうか。転職に失敗する理由として、3つお伝えしましたが、この3つには共通する原因があります。それは、事前のリサーチが足りないということです。情報不足が、最大の原因です。

 

「人間関係など、実際に転職してみないと、分からないこともあるのだから、仕方がないのでは」

 

こんなふうに感じる人もいるかもしれませんが、これは違います。今は、退職者や現役薬剤師が口コミを記載するサイトが数多く、存在するので、こういったサイトを閲覧すれば、かなりのところまで、内部事情を知ることができます。

 

また、転職会社に問い合わせれば、ネット上で公開されている募集要項よりも、はるかに深い情報を教えてもらえます。

 

これらは、探す努力をしたかどうかの問題です。ちなみに、情報収集の際に、転職会社を利用するとしても、1社だけに聞くのと、5社に問い合わせるのとでは、当然、情報量に違いがでます。

 

また、薬局、病院、ドラッグストアであれば、たいていのところは、希望すれば、事前に職場を見学することができます。自分の足で出向いて、自分の目で見れば、肌感覚で分かることが、たくさんあります。

 

見学なので、裏事情までは分かりませんが、「直感」は意外と当たるものです。たとえば、何となく、「嫌な雰囲気」を感じた時には、その感覚は、たいてい当たっており、この「雰囲気を感じる」ということが、とても重要です。

 

これらは、非常に手間であり、時間もかかりますが、こういった面倒なことを手抜きせずに行うかどうかで、結果が大きく変わってきます

 

そもそも、転職というのは、自分の人生を変えるような大きな決断であり、「何となく」で決めていいものではありません。その感覚を持って、慎重に考えてください。そうすれば、失敗を避けられるはずです。

 

転職で失敗ばかりしている人は、自分と向き合うこと

これは、薬剤師に限らず、どの職種でも言えることですが、転職で失敗ばかりしている人の、根本的原因は、「自分を知らない」ことです。自分を知っているようで知らない、あるいは、誤った形で、自分を捉えている人が多いです。

 

先ほど、失敗例としてあげた、薬剤師からMRへの転職というのは、まさに、このパターンです。営業という仕事を、自分もこなせると、勘違いしたことが、失敗の根本的な要因です。

 

仮に、意欲があったとしても、自分の体質、特性に合わない場合、その仕事で、結果を残すのは、難しいです。

 

「やる気があれば、なんでも出来る」というのは、よく耳にする言葉ですが、本質が合わないと、長続きしないのが「仕事」ではないでしょうか。

 

同じことを繰り返す人の特徴として、「自分の本質は何か」を見定めてない傾向が、強くあります。そのため、もし、失敗を繰り返しているのであれば、「自己分析」といった、客観的に自分を捉えることが、必要となります。

 

自己分析のためのワークには、様々なものがあるので、いくつか試してみることを、オススメします。

 

また、転職会社を経由して、求人を紹介してもらうのであれば、その時には、自分の経歴や退職理由など、詳細を伝えて、担当者からアドバイスをもらうようにしてください。他者から、客観的な視点での意見を得るというのは、自分を知る貴重な機会となります。

 

何度も同じ失敗を繰り返す人には、頑固で、人のアドバイスを聞かず、自分の思い込みだけで突破してしまうようなタイプが多いのですが、もし、あなたが当てはまるのであれば、こういった姿勢を修正して、他人の意見を素直に受け入れることを、心がけてください。

 

たくさんの人の転職を支援してきた転職会社は、生きた経験を積み上げてきており、そのなかには、転職の失敗事例も存在するので、そういった情報を聞かないというのは、モッタイナイです。

 

嫌な話になってしまったかもしれませんが、ここをクリアすることで、間違いなく、次の転職は、より良いものになるはずです。

 

転職に失敗する薬剤師に共通する3つの要因

 

安易な転職は絶対にNG

もうひとつ、転職に失敗しないためには、転職を安易に考えないことです。薬剤師は、人手不足ということもあり、好条件を提示している求人が多く、雇う側も、多少のことには目をつぶる傾向があります。

 

要は、売り手市場ということですが、そのため、「次があるから大丈夫」と安易に考える人が多いのです。でも、長く勤めてくれる人材が欲しいというのが、企業側の本音であり、そういった人を雇おうと、常に考えています。

 

そういった状況において、安易な転職を繰り返していると、会社からの心象は悪くなります。30歳前後ぐらいであれば、それでも、まだ雇ってくれるところもありますが、ほかの職業と同じように、薬剤師も、年齢が上がるに連れて、転職の難易度が上がります

 

30代後半で、何回も転職していて、さしたる実績もない。こんな状況だと、まずアウトです。年を取ってから、しっぺ返しがくることになりますが、こうなってしまうと遅いです。

 

管理薬剤師として、何年間も部下を指導しながら働いてきたといったように、企業側を納得させるだけの実績があれば、大丈夫ですが、そうでもなければ、雇ってくれるところはないので、くれぐれも注意してください。

 

転職が、自分にプラスになるのかどうか、真剣に考える

安易に転職を決めてしまう人というのは、心のどこかで、転職することがプラスになると、考えています。

 

収入が上がるというのが、最も分かりやすいと思いますが、転職したからといっても、必ずしも、給与が上がるとは限りません。転職することで、かえって、収入が減ったという薬剤師は、実は多いです。

 

また、仕事が忙しいので、もっと楽な職場へと思って、転職したけど、もっと忙しかったという、笑えない話もあります。

 

これらも結局は、先ほど触れたリサーチ不足ということになりますが、転職することが、自分にとって良いことなのか、突き詰めるという姿勢がないということもあります。

 

なぜ、転職したいのか、目的を明確にしたうえで、その転職先が、その目的を実現する職場なのかどうかということを、徹底的に調べるようにしてください。

 

その時には、『転職はうまくいかない』といった、疑いの気持ちを持って、チェックするぐらいのほうがいいです。

 

なお、具体的な調べ方については、先ほども触れたように、ネットを使う、転職会社に相談するといったことになりますが、目的意識が明確にできたら、その目的を転職会社に伝えるといいです。

 

そうすれば、目的の実現につながるような求人を探してくれますし、そこで良い求人が見つかれば、紹介してくれます。

 

結論:転職に成功するために押さえておくべきこと

結論としては、目的意識の明確化、念入りなリサーチ、この二つに転職に成功するために、必要不可欠なことです。

 

しっかりとリサーチしたうえで、自分にとって、この転職はプラスになるのか、そうでないのかを、判断したうえで、決断を下すようにしてください。

 

そして、そのためには、「自分がどのような薬剤師を目指したいのか」、自分を見つめることが、必要ということです。このことを肝に銘じて転職活動に挑んでください。