薬剤師の勤務先として、現在、主軸となるのは調剤薬局やドラッグストア。これに、病院や民間企業などが加わってくるといった状況ですが、今後、増えてくることが確実なのが、介護施設・福祉施設です。
今現在においても、訪問調剤業務という形で、求人がチラホラ出てきています。(介護施設から送られてきた処方箋をもとに薬を届けるサービス。残薬の整理、患者の服薬状況の管理なども、主要業務となってきます。)
また、入居者数が100名を超えるような大規模施設だと、常駐する薬剤師を採用して、服薬指導業務や薬歴管理業務にあたらせるケースが出てきています。介護業界というと、給料が安いイメージがありますが、薬剤師の場合、調剤薬局などと、ほぼ同等の水準となります。
平日の日勤のみ・土日休みというスケジュールで勤務するケースが多いため、調剤薬局やドラッグストアで働くよりも、プライベートの時間を確保しやすいという利点があり、週末に休みたいという人にとっては、密かに人気の勤務場所となっています。
下記のサイトにも、そういった求人例の一例が載っているので、興味がある人は、チェックしてみてください。
状況に合わせた対応を立案出来る能力が必須
薬局やドラッグストアでの勤務と比較すると、介護施設で勤務する時には、臨機応変に状況に対応出来るスキルが必須となります。相手は高齢者であるため、こちらの要求通りに服薬してくれるとは限りません。
錠剤だと飲みにくい、パップ剤だとかぶれやすいなど、イレギュラーなケースも出てきます。その時には、たとえば、前者だと、ゼリーを使用する、後者だと、スティック剤に変更するなど、患者がキチンと服薬出来るようにサポートする必要があります。
状況を改善するには、現状を的確に把握して、問題点を正確に認識する洞察力、及び、その問題点を解決するための手段を考えて実行するだけの思考能力・判断力・決断力が欠かせないものとなります。
また、健康面のトラブルが出てくる高齢者が相手なので、処方箋通りに服薬したとしても、効果がない場合もあります。そのため、薬がキチンと効いているのかどうか把握して、薬剤師としての視点から、医師に対して現状報告・処方提案をすることも、重要な役割となります。
さらに、高齢者の場合、複数の薬を服用しているケースが大半なので、薬の相互作用による副作用が出ていないかどうか、チェックすることも欠かせない役割となります。
このように、介護施設における薬剤師の役割というのは、調剤ではなく、服薬管理がメインとなります。そのため、繰り返しになりますが、先ほども触れたように、現状を正確に把握する能力、その認識のもとに改善策をまとめあげる思考力が必須となります。
介護施設で業務を遂行するには、コミュニケーションスキルも重要
もう一つ、介護施設で働く場合、コミュニケーション能力も欠かせないスキルとなります。薬剤師というのは専門職なので、たとえば、薬局で調剤業務に専念する時などは、自分一人で全ての業務をこなすことになり、同僚スタッフとの協働といったことは殆ど発生しません。
しかしながら、介護施設で働く場合には、医師や看護師、ケアマネージャー、ヘルパーなどと、積極にコミュニケーションを取って、入居者の生活状況・健康状態を確認しながら、業務を進めることになります。
こういった意思疎通がなければ、薬剤師としての役割である服薬指導・服薬管理業務を実行することは出来ません。そのため、コミュニケーション能力がない人、協調性がない人だと、介護施設での勤務は務まりません。このことも、忘れないようにしてください。
在宅医療という可能性
最後に、これは補足ですが、高齢者絡みの話としては、今後は在宅医療というのも、薬剤師にとっての重要な役割となってくると考えて、間違いありません。実際、大手の薬局チェーンを中心に、在宅医療部門を設置する企業が増えてきています。
業界のなかでは、在宅医療のほうが、先行しており、専門知識やスキルを高めるための研修制度等、教育体制が整備されていますが、在宅医療は介護施設での業務と相通じるものがあるため、在宅医療のエキスパートになれば、それは介護施設での勤務にも役立つことになります。
そのため、まずは在宅医療業務に従事して、将来的に介護施設で働くという選択肢もあります。まだまだ、介護施設からの薬剤師求人というのは限られているため、働きたいと思っても、まだまだ、そう簡単には、チャンスが見つからない状況です。
一方、在宅医療業務に関する求人というのは、かなりの数になるので、探せば幾らでも出てくるので、当面は在宅医療に専念して、高齢者をサポートするために必要な経験を積んでいくといったことも、ぜひ考えてみてください。
いずれにしても、薬剤師が必要とされる職場は、今後も増え続けるということです。薬剤師が増え続ければ、いずれ飽和状態になるという話がありますが、需要も増えているので、活躍出来る機会は、まだまだ幾らでもあります。
自分が活躍出来る人間になるように、日頃から、積極的にスキル・知識を磨いていきましょう。